泡沫の兎

 

 

 

 

 

うさぎは自分たちの運命を受け入れるために、
尊厳と何よりも意志を必要としている。

 


———リチャード・アダムス

 

 

 

 

 


はじめに

 ※本作は、株式会社KADOKAWAが権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

 

・当シナリオは「クトゥルフ神話TRPG(第6版)」及び「クトゥルフと帝国」「マレウス・モンストロルム(以下マレモン)」に対応したシナリオです。

当シナリオは「犬飼ビーノ」と「アキヤマ」による合作です。

・邪神、神話生物を独自解釈しております。ご了承下さい。

 

セッション概要

 推奨人数:3〜4人。

プレイ時間:PL会話=ボイスチャット、探索者RP=テキセで約9~10時間

シナリオ形式:シティシナリオ

舞台設定:1933年、12月上旬の帝都

 

推奨技能

・目星、聞き耳

・刃物系技能(ナイフ、日本刀など)

■準推奨技能

・隠密系技能(隠れる、忍び歩きなど)

 

あらすじ

ぜんぶ きんきら ごごのこと 探索者たちは知り合いの新聞記者に呼び出され、帝都上野某所にある洋食店に向かう事となる。 ゆるーり すいすい ぼくらは すすむ 『最近帝都を騒がせている連続殺人鬼「ハサミ男」について』調査協力をしてほしいとのこと。 2ほんの オールで ぎこちなく 詳細は洋食店で聞く事になる。 ほそい かいなで こいでゆく
……さて、このお話は、どこからが夢で、どこからが現実?

 

 

1933年12月上旬の帝都がシナリオの舞台となります。

シナリオ内では日を跨ぐことはありません。

長くて短い「ナンセンス」な1日を駆け抜けよう!

 

※現代においては不適切な表現があります。ご注意下さい。


KPさんへ

 

当シナリオはKPと意思疎通ができなくなるというギミックが含まれております。

クトゥルフ神話TRPGにおいて「説明される狂気」は、もはや『狂気』とは呼べないのではないだろうか?という考えに基づき、ゲーム進行をしなくてはならない「KP」という絶対的な存在が、少しずつ狂気に侵されます。「KPと意思疎通が出来ない恐怖」をプレイヤーに与えよう!

 上記のギミックにより、オンラインによるテキストセッションで遊ぶことを推奨致します。詳細はシナリオをお読み下さい。

 

また、当シナリオは「夢オチ」の要素があります。しかし、どこからが夢で、どこからが現実だったのかが曖昧なまま、シナリオが終息します。「ナンセンス(無意味)」な雰囲気をKPさんの手で表現して頂ければ!

 


 

シナリオの真相

 

明治初期に日本で巻き起こった『ウサギバブル』。
兎飼育が大流行し、美しい毛並みを持つ個体が高値で取引された。


商売の為に海外から輸入された西洋の兎達。兎を積んだ貨物の中に、イギリスのウォーランダウンから持ち込まれた『緑の神(マレモンP247)』の一部が混入していた。緑の神は、一片でも口に入れれば『緑の神の子(マレモンP110)』、もとい兎人間に変化する植物である。
一羽の「意思のない兎」がそれを食べてしまったのだ。
この兎はその後長い年数を生き、明治、大正を超えシナリオ本編である昭和初期まで生き延びる。

長い年数を生き知性を手に入れた兎は、ドリームランドに棲まう緑の神を顕現させるため行動に移る。夢の世界に存在する緑の神から、その体の一部を受け取り、上野周辺の草地や料亭・家庭の食物に「緑の神」を密かに忍ばせていた。緑の神の一部を食べさせた人間を緑の神の子に変化させ、眷属を増やす兎。

眷属となった兎人間(緑の神の子)は上野の地下に拠点を築いていたが、そこには「博物館動物園駅」が建設されることになる。
拠点を出入りする兎人間たちは、電車に気づけずよく轢かれてしまっていた。そのせいで工事は中断されがちで、駅の完成が遅れているのだ。

 

ドリームランドの緑の神の一部が溢れ「根を張った」ことにより、上野周辺は「夢と現実の境界が曖昧」になってしまう。狂気が正気となり、異常が正常となる空間は、まるで兎穴に落ちてしまった少女が迷い込んだワンダーランドのよう。探索者たちは、この「意味のない夢現の世界」から脱出することができるのだろうか?

 

さて、このお話は、どこからが夢で、どこからが現実?

それは誰にも分からない。

 


NPC

 ▼兎(うさぎ)

「…………」

 

このシナリオにおける黒幕。「緑の神」を顕現させようと企む、緑の神の子。もとは人間ではなく、動物の兎。ゆえに「尊厳と意志」を持っていない。拠点である上野の地下鉄を中心とし「緑の神」をばら撒き、緑の神の子を増やしている。

兎が苦手とする大きな音を出す存在を大きなハサミで「黙らせて」いた。彼(彼女?)の行った殺人は「ハサミ男事件」として話題となる。

 ▼帽子屋の双子(ぼうしやのふたご)

「君がここにいる意味はない」

 

「緑の神」の一部を食べてしまったことにより、緑の神の子と化してしまった双子の兄弟。上野の「羽田帽子店」の跡継ぎ。緑色が兄、茶色が弟。

「兎」の部下として行動しており、兎が苦手とする大きな音を出す存在を、同じく大きなハサミで「黙らせて」いた。彼らの行った殺人は「ハサミ男事件」として話題となる。

 本来は、親孝行者な仲の良い双子。彼らもまた「兎」の被害者である。

 ▼宇佐美 杏次(うさみ なんじ)

「ほなよろしくニキ!」

 

野喜宇(やきう)出版の記者。変な関西弁で喋る。

声が大きく行動的で、すぐ強気になる…が、決して喧嘩は強くなはい。

趣味はスポーツ観戦、特に野球。

超絶美人の妻がいる。

 ▼島田 村夫(しまだ むらお)

「みんなー」

 

野喜宇出版の新米記者であり、宇佐美の部下。仕事が遅い代わりに、丁寧。

まだ20代だが、ハゲ始めているのが悩み。

 ▼田中 太郎(たなか たろう)

「お前たちもやられたのか……、政府に!!」

 

活動家の青年、いわゆる「アカ」と呼ばれる存在。大日本帝国に革命を起こしたいと考えているが、運がいいのか悪いのか何を計画しても上手くいかない。平凡すぎる本名がコンプレックスであり、自らを「燃えるハートのジャック」と名乗る。INTは一桁。

 ▼植木屋(うえきや)

「商売あがったりだぜ、全く」

 

上野に店を構える植木屋。新しく建設される「博物館動物園駅」周辺の庭木などを管理するため、駅で仕事をしている。「ハサミ男」に伐採用の大きなハサミを盗まれてしまった。

 ▼虻川(あぶかわ)

「あなたも、尊厳と意志をたいせつになさって下さい」

 

胡散臭い露天商人。子分の忠太と共に「楽をして金儲けができる商売」に目を光らせており、このシナリオでは上野周辺に発生した兎を捕まえて売り捌いている。自分の事にしか興味がないナルシストな小心者だが、根は真面目。

 ▼忠太(ちゅうた)

「ボロい商売だぜ〜!」

 

虻川のチュ〜ジツな子分。逃げ足とお金の計算が早い(速い)。

 ▼宇佐美のワイフ

「Forgot my kiss, My darling!」

 

宇佐美の妻。APP18。

夫のことを心から愛している。


PLへの事前情報


PLさんへの探索者の選定や製作の参考に。

 

1933年昭和8年、帝都。寒さも深まってきた12月上旬。

貴方達は、知り合いの新聞記者『宇佐美(うさみ)』に呼び出され、帝都上野某所にある洋食店に向かう事となります。『最近帝都を騒がせている連続殺人鬼「ハサミ男」について』調査協力をしてほしいとのこと。詳細は洋食店で聞く事となるでしょう。

『宇佐美』とは友人や腐れ縁、何か借りがある、等の関係性があると導入がスムーズになります。

 


■導入

 ★=KP情報

 

 

1933年昭和8年、帝都。寒さも深まってきた12月上旬。
貴方達は、新聞記者の『宇佐美』に呼び出され、帝都上野の洋食屋「山猫軒」に集合することとなった。
全員美味しい洋食に舌鼓を打ち、一息ついたところだ。

 

 

宇佐美

「どや~!美味かったやろここの飯!ワイのフェイバリット洋食屋やで!」

宇佐美

「ほな本題に入らせてもらうで。」
「最近帝都を騒がせてる『ハサミ男』っちゅうもんを捜査してほしいんや!」

 


【ハサミ男とは?】
「ハサミ男は、
1ヶ月ほど前から帝都に出没している連続殺人鬼!」
「殺しの仕方は共通しててな、どの被害者も首を切断させてるんや。」
「被害者は一般市民から軍人なんかも…
…、女子供も容姿無しや!」

 

【実は……】
「ほんでな実は…ワイもハサミ男に追われた事があるんや…

「どでかいハサミをブワーーー!!!振り回して、こっちに走ってくんねんや!!!」
「全力で逃げて振り切れたけどな、こわかったわ~~!ホンマ…

 

【依頼内容】
「そこで!我が野嬉宇出版は「ハサミ男」をイチバンにスクープしたいんや!」
「活劇キネマも顔負けなこのサスペンス!書けば間違いなく大ウケけやで!」
「ほんでな、おまいらにハサミ男の真相を追って欲しくて呼んだってワケ!」
「報酬は弾んだる!まかしとき!」

 

【調査は明日から!】
「ワイの部下の島田に、ハサミ男の情報まとめさせてるところや。」
「回りくどくて申し訳ないけどな、明日島田を上野駅前に送り込むから、また明日情報聞いたってくれや。」
「全く島田の奴、仕事が遅くてかなわんわぁ。」
「明日また上野駅に集合で、ほなよろしくニキ!」



探索者は山猫軒を後にする。

 


■翌日、上野駅前

 

★この時点で、緑の神の拠点である上野に居る探索者達の夢と現実の境界は曖昧になっている。


昨年に新装された上野駅は、さながら小さめのビルのような造りをしている。
観光者向けの一円タクシーを始めとし、車通りの多かった上野駅。
駅の乗車口と降車口を上下に分離し、車両の通行をスムーズにしてあったそうだ。

 

あなた方は再び上野駅へと集合する。
しかし、約束の時刻になっても宇佐美の姿がない……。

 

★探索者にRPをしてもらったら、以下の描写。


ドーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!

 

あなた達の目の前の道路で、「何か」がタクシーにド派手に吹き飛ばされた。

 

 

「………」

 


轢かれた「何か」はゆっくりと起き上がり……、
そして何事もなかったかのように立ち上がってどこかへ歩いて行った。
タクシーの運転手は、口を開けて唖然としている。

タクシーの運転手同様、唖然としているあなた達だが……
その背後から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 


宇佐美
「おまいらーーーーーー!!!」

 

 

宇佐美

「ワイやーーー!!!」
「助けてやでーーー!!!」


奇怪!なんとそこに在ったのは"ウサギ"と化した宇佐美の姿であった!
一体、一晩で彼に何があったというのだろうか!?


宇佐美は何故ウサギに?

ハサミ男とは?

轢かれた人物は?

これは、この物語の始まりに過ぎなかった。

 

【兎と化した知人の姿を見たことによるSAN値チェック 0/1

 

 

【一体何があった!?】
「昨日…おまいらと別れた後の帰り道から記憶がないんや!」
「気が付いたら暗い所に居て……、体を見たらがふわふわの兎になってたんや…」
「怖なってその場から無我夢中で走り出したら、光が見えてな!」
「光に向かって夢中で走っていったら、上野駅に着いたんや!」
「そんで、こうやってお前らと合流したっちゅうことやな!」

 

 

■部下の島田です

 

兎になってしまった宇佐美の話を聞いていると、あなた達の背後から声がかけられる。

宇佐美の部下である「島田」だ。

 

 

島田

「…あのう…」
「宇佐美さんから伝言を頼まれて来ました。部下の島田村夫ですう。」

 

 

【宇佐美が兎になってるんだけど……】
「あー」
「そういうこともありますよねー」

「名前が似ていますし……」

 

★既に「夢と現実」「正気と狂気」の境界が曖昧となっている。

 兎の姿になった宇佐美を見ても、NPCたちは曖昧な返答をしたり、都合のいいように解釈をしてしまう。

 

【ハサミ男について】
「宇佐美さんが言ってた、ハサミ男の件ですけど…」
「犯人は帽子をかぶっていた、という共通した目撃情報があります。」

「ハサミ男は単独犯ではなく"二人組"で行動している、という目撃情報もあったようですね。」

 

【山猫軒について】
「あっ。あと…」
「みなさんが昨日行かれてた山猫軒、夜逃げしちゃったらしいですよ。」
「従業員全員がさっぱり居なくなっているそうです。」

 

 

宇佐美

「そ…そんな…ヒャー!」
「なんでや!大繁盛してたはずやろ!突然夜逃げだなんて…」
「クソッ!全部不景気が悪いんや!」

島田

「それじゃぼくはそろそろ失礼します。」
「色々大変でしょうけど、頑張ってください。」

宇佐美

「ハサミ男と遭遇したワイが変身した… 何か関係あるところがあるかもしれへん!」
「すまんが、ワイも抱っこして連れて行ってくれや!」
「元の姿に戻りたいんや〜!これじゃ野球も見に行けへんし……」

「こんな恥ずかしい姿、愛しいワイフにも見せられへん!」

 

 

以降、兎の宇佐美が探索者に同行することになる。

優しく抱き抱え、連れて行ってあげよう。

 

 

ここから先は自由探索の時間だ!

この時点で行ける場所は

 

・上野駅周辺(聞き込み)

・上野駅前の露店(聞き込み)

洋食屋「山猫軒」(探索)

 

である。どこから向かっても構わない。

 

 


■上野駅周辺

 

よく見れば、なんだか物々しい雰囲気である。どうやら電車が止まってしまっているようだ。

 

【駅員に尋ねる】
「先ほど、地下鉄の線路でなにかを轢いてしまったようなのです」
「我々鉄道員が確認してみたところ…」
「血痕は確認できましたが、生物の死体などはありませんでした」
「列車の衝撃や血痕の量からして、おそらく人間ほどの大きさの生き物でしょう」
「困ったことに、最近の帝都の地下鉄では同様の事故が何度か発生しております」
「その事故の影響もあり、近日開通予定の『博物館動物園駅』の工事も中断されております」
「ご迷惑とご不便をおかけしております!」

 

【地下鉄の豆知識】★シナリオと全く関係ないので、省いてもOK。知識やアイデアで探索者に答えさせてもいい。
「さて、ここでシナリオとは関係の無い列車の豆知識!」
「地下鉄列車内の中吊り広告の掲載費は、地上列車の広告掲載費よりも高額です」
「なぜか?」
「それは、地下鉄の窓からは風景が見えないので、広告に目が止まるからでございます!」
「それでは!私は引き続き勤務がありますので!」

 

 

<知識>
新しくできる駅は、京成電鉄の『博物館動物園駅』。
元々皇室で代々引き継がれてきた「世伝御料地」という特別な土地であり、駅舎の建設には天皇陛下の勅許を得る必要があった。上野公園の木を伐採してはならないという規約があったため、地下鉄となる。1932年から建設に着手し、今月10日には開業する予定。「世伝御料地内に建設するため品位に欠けるものであってはならない」という厳しい条件があり、駅舎入り口の建物は西洋風の威厳な造りとなっている。

 

★探索可能箇所に『博物館動物園駅』が追加される。

 

 

 

■燃えるハートのジャック


電車が止まってしまっている駅前。

駅員への聞き込みが終わった探索者がその場を移動しようとすると……。

足止めを食らっている人々に向かって、「活動家と思わしき青年」大きな声で熱心にスピーチをしているのが目に入る。

 

 

活動家と思わしき青年

「貧困差!就職難!劣悪な労働環境!」
「政府は何をやっている!?この状況を許しておけるか!」
「俺は立ち上がるぜ!皆もそうだ!一緒に立ち上がってくれッ!!!」

 

 

そう叫んでいたが、活動家と思わしき青年は警察にやんわりと捕まり、連行されてゆく…


警察官

「はいはい迷惑ですよ~」

 

 

活動家と思わしき青年

「なんだ!?放せこの薄情者!俺は日本の為に戦っているんだッ!」
「クソッ!放せェッ!!!」

活動家と思わしき青年

「覚えておけ!俺の名は『燃えるハートのジャック』だァッ!!!」
「俺は!!!必ず帰ってくるからなぁっ!!!」

 

 

青年は数名の警察官に引きずられ、あなた達の前から消えていった。

 

 

★探索者がジャック(田中太郎)を助けようとした場合、警官に阻止をされてしまう。

 どちらにせよ後ほど再会できるので、ここでは彼の存在をPLに認識させるだけで良い。

 

★冒頭で上野駅前に居た「兎」は、大きな声で演説を行うジャック(田中太郎)を狙っていたのだ。

 うっかりタクシーに撥ねられ妨害されたので、一旦引いた。

 

 


■上野駅前の露店


上野駅から少し離れたところ、戦前昭和お馴染みの露店が立ち並んでいる。
大繁盛している店から怪しい店まで、様々な店が立ち並んでいる中…、
「胡散臭い二人組」が、露店を開いて大きな声で客寄せをしている。
その二人が売っているものは……

 

露天商①

「寄ってらっしゃい、見てらっしゃ~い!」

「さあさあ、かわいい兎がい〜っぱい!ふわふわの兎が大安売りですよ!」

露天商②

「あ、そこの坊ちゃん嬢ちゃん!兎いらない?」

「ほぉら!!!かんわい~~ぃ兎だよ!!!」

 

 

通りすがりの子供たち

「しーっ!静かに!」

「ウサギは『大きい音が苦手』なんだよ」

「騒いじゃ可哀想だよ」

 


通りすがりの子供たちに兎を勧めたがスルーされてしまった胡散臭い露天商人の二人組は、その様子を見ていた探索者たちに目を付け、絡んでくる。
男たちの店にはたくさんのカゴが詰まれており、その中には「白い兎」が詰められている。
兎はというと……、どれも絶妙に可愛くない顔をしている。

どれも目は真っ赤で、フンフン言いながら虚空を見つめている……。

 

★この兎たちは「緑の神」の一部を食べてしまった人間たちの成れの果てである。

 

胡散臭い露天商の二人から、話を聞くことができる。

 
【どうですそこの皆さん!兎ですよ兎!】
・ここ最近、野生の兎が大量発生している。上野周辺、特に夜間。
・動物園から逃げているのかと思ったけど、そういう事じゃないらしい。
・とにかくそこかしこに白い兎がウロウロしている。トロいから捕まえ放題!
・兎を仕入れるのに費用はゼロ!ボロすぎる商売だ。

 

【ハサミ男について】
・最近話題の殺人鬼のこと?怖いよね〜。

・何か知ってたら、出版社にネタを持って行って金にするところだ。


【ウサギバブルって知ってる?】

「ウサギといえば……、明治初期に『ウサギバブル』なる現象がありましたね!」
「帝都で起こった、ウサギに対する投機のことですよ」

「金持ちが愛玩用の白くてかわゆい輸入品種のウサギに高値をつけたのです」
「それに一般人までもが引きずられて、ウサギ売買のオークションが多く開かれていまして!」
「ウサギ一羽につき50円から数百円にもなったとか!」
「これによって家業や本業を忘れてウサギ飼育に没頭してしまう人が後を絶たず、東京府が『集会の禁止』『ウサギ一羽に対して月1円の課税』『届出制度』などを布達……」
「ウサギ飼育に関する指南書なども多数出版され、投機としてのウサギバブルは終わったというわけです、はい」

 

 

露天商①

「して昨今の上野、野生の兎の発生により、ウサギを飼う家は少なくありません」
「あなたもウサギ(宇佐美のこと)を飼っていらっしゃる!」
「流行りに乗っかるのも良いでしょう、周りに流されるのも良いでしょう!」
「ですが……、」
「そこに『自分の尊厳と意志』がなければ、ヒトはケモノになってしまいます」
「あなたも、尊厳と意志をたいせつになさって下さい」
これがしたい、あれがしたい、自分はこう思う!と、主張をするべきなのです」
「世界の流れという、狂気に飲み込まれてしまわないようにね!」

露天商①

「ところで、この家なき可哀想なウサギさん」

「一羽五円でいかがです!?」

 

 

★ちなみに、ここで兎を購入しても荷物になるだけである。

 しかも、常に持ち歩いていたとしても途中で居なくなってしまうぞ!

 

 


■洋食屋『山猫軒』

 

あなたたちも昨日訪れた洋食屋だ。
昨日の賑わいは何処へ行ったのか。店の中には誰もいない。
そのまま人がどこかへ消えてしまったかのように、物がそのまま散乱している。

調べられる箇所:【ホール】【厨房】

 

 

■ホール
<目星>
室内の至る所に細かい白い毛のようなものが落ちている事がわかる。

★兎になってしまった従業員たちの体毛。

 

■厨房
<目星>
厨房には調理中であったであろう食材がそのままになっている。
その中に置かれている食材と思わしき「野菜」を見つけることができる。
しかしそれは、あなた達が知る限りの、何の野菜とも似つかない。
植物であることは確かだが、見たことがない奇妙な形をしている。

★緑の神の一部である。

 

 


■博物館動物園駅

 

上野公園の穏やかな並木道を歩いていくと、工事中の駅舎が見えてくる。
この駅は、帝室博物館(現東京国立博物館)や恩賜上野動物園の最寄駅となる。
建設途中ではあるが、完成間近のピラミッド型屋根が特徴的な、美しい西洋建築であることがわかる。

建築途中の駅舎の傍では、植木屋と思わしき男がしゃがんで作業をしている……。

 

 

植木屋

「はぁ~…」

 


いかにもダルそうな植木屋が、小さいハサミでちまちまと草を刈っている。
あなた達が話しかけようにも、不機嫌そうに目をそらす。
働き通しなのか、あきらかにやつれ気味に見える…



【どうしたの?】
「盗まれちまったんだよ、伐採用のハサミ。」
「1ヶ月くらい前からさ、何回も盗まれちまって、もううちの店で残ってんのはこのちっこいハサミだけよ。」
「何処の物好きか知らねぇけど… 商売あがったりだぜ、全く。」

 


<アイデア>※山猫軒探索済の場合のみ
植木屋がちまちまと切っている植物だが、見覚えがある。
洋食屋「山猫軒」の厨房に放置されていた野菜に、色や形がよく似ているのだ。

 

植木屋
「これなぁ、どこから種が飛んでくんのかわかんねぇけど、切っても切っても生えてくるんだよ。」
「最近になって生えてくるようになったなぁ、なんなんだろコレ」

 


【ハサミ男について】
「ハサミ男?なんかの調査でもしてんの?」
「そういや……、あの帽子屋の店主、ハサミ男に殺されたんだっけ…」
「1ヶ月くらい前に『羽田帽子店』の店主夫婦が殺されたらしいぜ。可哀そうに」
「店は息子さん達が引き継いだらしいけど、すぐ畳んじまったんだってな。」
「両親が死んだのがショックだったんだろうな…、若いのに髪の毛は真っ白になっちまったらしい。」
「羽田帽子店は、上野駅からそう遠くないところだよ。見りゃすぐわかる。」
「お前らも、夜道には気をつけろよ。」

 

 

★探索可能箇所に『羽田帽子店』が追加される。

 

 


■羽田帽子店


植木屋に教えてもらった帽子店までやってきたあなた達。

帽子屋の外観は、帝都ならばそこら中にありそうな、ごく普通の帽子屋という印象。

ただ、店の中は真っ暗。昼間だというのにお店はやっていないようだ。

店の裏手が洋風の住居になっており、『羽田』という表札が掲げられている。

 

覗き込むも、店内に人の気配はない。
店の裏手、羽田家の玄関前にはチャイムがある。

チャイムを鳴らし、少し待つと、玄関のドアが開く。
二人の男性が、家から出ずに、扉の向こうからあなた達に話しかけてくる。

 

 

帽子屋の双子

「どちら様です?」「どちら様でしょうか?」

「なんのご用でしょうか?」「ご用件をお伺いしても?」

 

 

髪は白くボサボサ、よく見れば目は充血したかのように赤い。まるで日本人には見えない。

★ハサミ男について尋ねたい、殺された両親について聞きたい、など交渉をすると家へ招き入れられる。

 

 帽子屋の双子

「……」「……」

 

双子は玄関で何か小声で話し合ったのち、あなた達を家へ招き入れる。

 

帽子屋の双子

「立ち話もなんですから」「どうぞ家に上がって下さい」


双子は玄関の扉を開けたまま、家の中へと消える。
あなた達は、開けっ放しの扉をくぐることになる。

 

帽子屋の双子
「どうぞ」「こちらへ」
「お座りになってください」「今お茶を淹れましょう」


家の客間へと案内される探索者。
双子は、不自然なほどぴったりと、鏡合わせのような動きでティーカップにお茶を注ぐ。

あなた達が席へ着くのとほぼ同時に、双子も席へ着く。

 

帽子屋の双子
「さて」「お茶会を始めましょう」
「何でもお聞きください」「何も聞かないでください」

 

 

★ここからは、狂気のお茶会タイムだ!

PLに「なんだかKPの描写や文章がおかしい…?違和感があるような…?」と思わせる文章でやりとりをしよう。「狂い始めたKPの文章」は、「赤色」で記載するので、参考にして頂きたい。

 

★帽子屋の双子の問答に、意味は全くない。つまり、この双子への聞き込みは「ナンセンス(無意味)」なのだ!探索者たちにどのような質問をされても、無関係、無意味な、トンチンカンなことを喋らせよう。記載する以下の質問や答えは例である。

 

★また、ここは狂気の夢の世界である。狂気が正気、正気が狂気となってしまったこのシーン以降からは、なんと「何が起きてもSAN値チェックが免除」される。ただし、減少するはずだったSANはクライマックスで一気に支払うことになる。探索者に「???」という謎のステータスを設置し、減少するSANの数値を蓄積させていこう。

 

 

<目星>
客間の暖炉の上に、刃渡りがとても大きい刈込鋏がふたつ。
とても大事なもののようで、鋏は無造作に傾いて雑に飾られているよ。
赤い錆や黒い錆が目立つ、汚くてザラザラとした素敵な鋏だ。

 

【目星成功探索者に確定SAN減少 1★PLには秘匿

 

【このハサミは?】
「ペンキ屋なんてしたことはありませんよ」「泳げないのにそんな無茶なことはしません」

この双子はどうみても真っ当なことを言っているに違いないよね。

 

 

【ハサミ男に殺された両親について尋ねる】
「あれは、しかたがないのです」「これは、しようがないのです」
「処刑宣告をされたのです」「彼女ら彼らの時間は止まってしまった」
「それを女王様は望んでおられます」「我々も望んでおります」


兄弟は砂糖入れを開け、中のものを取り出して自分のティーカップへと投げ入れる。
ぽちゃん。
勢いよく入れたので、中身の紅茶が机に飛び散る。
投げ入れたもの、それは砂糖ではなく、ただの小石だった。
兄弟はティーカップの小石をスプーンで混ぜる。
ガラガラガラガラ、と陶器と石がこすれる嫌な音が部屋に響く。

 

【双子の様子を見ていた探索者に確定SAN減少 1★PLには秘匿

 

 

【女王様って?】
「女王様を見たことがない?」「まさかそんなはずはないでしょう」
「ではどこから話しましょう」「何も話すことはない」
「そう、あれは星の輝く月曜日のことでした」「火曜日じゃなかったかな?」
「違う、土曜日だったはずだ」「三日後のことだったと思うけれど」
「だってウミガメが言っていたじゃないか」「アシカは信用ならないよ」

 

【女王様はどこにいる?】

「ご存知でない?」「ご存知ですよね?」

「女王様は地下の国へ」「女王様は夜の国へ」

 

【両親が殺されるのを知っていた?】

「ええ、間違いありません」「絶対に違います」

 

【上野周辺に発生している兎について何か知らないか?】

「なんと、カエルは困りましたね」「天球儀が止まってしまうわけです」

 

 

★探索者の質問にいくつか答えると、以下の描写。

 

 

帽子屋の双子
「埒があかないな」「どこまで戻しましょう」



兄弟は懐から古びた懐中時計を取り出す。
そして、テーブルの上のバター入れにバターナイフを突き刺した。
バターをたっぷりと乗せたナイフを、懐中時計に塗りたくっている。

 

双子の様子を見ていた探索者に確定SAN減少 1★PLには秘匿

 

 

帽子屋の双子
「上等なバターを乗せたってだめだ」「やっぱり時間は動かない」
「さあ!」「ねえ!」
「時間です」「席を交換してください」


双子は一斉に立ち上がり、あなた達を急かす。
席をひとつずらしてほしいらしい。

 

★双子の望み通り、探索者が席をひとつずらして座ると、お茶会が再開される。

 

帽子屋の双子
「さて」「お茶会を始めましょう」
「何でもお聞きください」「何も聞かないでください」

 

★先ほどの記述の通り、双子の問答に意味は無い。探索者が質問をすればするほど、意味のない(役に立たない)情報が渡されてしまうのだ。数個の質問ののち、席をずらすという行動を繰り返しさせることによって、PLに「何かアクションを起こさないと、このシーンがループし続けてしまうのでは?」と思わせよう。

 

★痺れを切らした探索者がお茶会から離脱しようとすると、以下の描写に以降。なお、探索者がお茶会をやめる、という宣言や行動がない限り、この意味のないお茶会は延々と続いてしまう。

 

 

 

 

■時間の無駄、首をちょん切れ

帽子屋の双子

「行くの?」「行ってしまうの?」
「行ってしまうんだね」「逃げてしまうんだね」

帽子屋の双子

「アリス!」「アリス!」 

 


おお、ふたりは飛び跳ねるように、暖炉上のふたつのヴォーパルの剣を手に取った!
大きな耳を携えたふたりには、アリスから投げられる書き物机とカラスは見るに絶えなかったのである。

 

【兎人間(緑の神の子)を見たことによるSAN値チェック 0/1d4】★PLには秘匿

 


さあアリス!

ふたりを黙らせることができなければ、君の首がちょん切られてしまうよ!

いち、にー! いち、にー!
貫きて尚も貫く!
ヴォーパルの剣が刻み刈り獲らん!
ジャバウォックからは命を!勇士へは首を!

 

すごいや、帽子屋とアリスの決闘だ!
さあ、アリス! 急いで武器を手にとって!

 

 

帽子屋の兄(緑の神の子)のステータス
STR13 CON16 POW13 DEX19 SIZ13 DB+1d4

▶︎HP14

▶︎ハサミ(小鎌)44% ダメージ:1d6+1+DB 武器耐久力:12

 

帽子屋の弟(緑の神の子)のステータス
STR13 CON16 POW13 DEX19 SIZ13 DB+1d4

▶︎HP14

▶︎ハサミ(小鎌)44% ダメージ:1d6+1+DB 武器耐久力:12

 

 

★双子とKPは、探索者のことを「アリス」と呼ぶ。

 双子の耐久力を0に出来たら、以下のシーンへ。

 


双子の帽子屋は、アリス達の剣を受けてしまった!
傷口から血が噴き出すが、それでもなお、兄弟はおしゃべりを続ける。
お茶会を続けたいんだね!

 

 

 

帽子屋の双子

「嗚呼、夜の国が燃えてしまう!」
「鋏研ぎはどこにいる!?」「鋏を研がなければ!」
「アリス!」「アリス!」
「「アリス!!」」
「おまえの席はない!」「きさまの席はない!」
「「君がここにいる意味はない!」」

 

 

双子は、操り人形の糸が切れたようにばったりと倒れてしまった。
絨毯にはブドウジュースのような血が、じわりと染み渡る。

この家にはアリス以外、誰もいなくなってしまった。

狂ってしまった帽子屋の双子のこと、気になるよね。

おうちの中を探検することができるよ

 


調べられる部屋は、羽田家2階に位置する「兄の部屋」「弟の部屋」だ。

 

 

探索前に<アイデア>

あなたは帽子屋の双子の両親が「ハサミ男」に殺され、亡くなったことを植木屋から聞いている。
しかし、家の中に仏壇らしきものが見当たらない。
宗派が違うとしても別の品が置いてあるはずだ。

血を分けた両親を弔うためのものが無いのは、違和感がある。

 

★緑の神の子と化した帽子屋の双子の「尊厳と意志」は欠如している。両親のことなど、どうでもいいのだ。

 

 

■兄の部屋

 

扉を開けようとすると、鍵はかかっていないのに開けることができない。
奥で何かが引っかかっているような感触がある。
力尽くで扉を押せば開くだろう。

 

★STR*5成功で扉を開けることができる。

力を入れて勢いよく押すと、扉は大きな音を立てて開いた。
そこはありとあらゆる「もの」で溢れた散らかり放題の部屋だった。物置と間違えてしまうほどだ。
足の踏み場を探すのにも一苦労だろう。

部屋に散らばって居るものは、一般家庭にあるとは思えない奇妙なものばかり。
ラッパや太鼓などの楽器、自動車に取り付けられるクラクション、軍人用の拳銃、ラヂオ……。
それらの品が大量に散らばっているのだ。
拳銃には、実弾が1発だけ入っている

★拳銃を持っていけば、後ほど緑の神の子たちに襲われるシーンで役立つ。

 

<アイデア>

この部屋に散らかっているものに共通点を見出すことができる。
それは「大きな音を出すもの」だということだ。

また、ここにあるもののほとんどは、壊れてしまって音が鳴らないようだ。

 

<聞き耳>

部屋を歩き回っていると、じゃりじゃり、ぱりぱり、と足元から音がする。
何かを踏んでしまっているようだが、暗いのでよく見えない。
目視できるところまでもってくると、それは白くて軽い石のようだった。
部屋のあちこちに散らばっている。


白くて軽い石に対して<知識-10>もしくは<アイデア-10>
アリスは気付いちゃった!
この白い石、石じゃなくて……『火葬された人の骨』だよね。

 

【人骨だと気付いた探索者に確定SAN減少 1】★PLには秘匿

 

★帽子屋の双子の両親の遺骨である。緑の神の子と化した双子は、息子らを心配した両親の言葉が「うるさかった」ので「騒音を出すもの」としてこの部屋に放置されている。ひどい。

 

 

 

■弟の部屋

 

丁寧に片付けられた質素な部屋だ。
書き物机の上に、一冊のノートが置かれていること以外、特に気になるものはない。
ノートを開いてみれば、それは弟の日記だとわかる。
以下、気になる内容を抜粋。


【弟の日記】

<1ヶ月半前の日付>
なんだか兄の様子がおかしい。
いつも気がそぞろで、会話が噛み合わないことがある。
店を継がなくてはならない責任感からだろうか?
「山猫軒」に行かないかと誘われたので、食事がてらよく話し合ってみよう。

<1ヶ月と少し前の日付>
家の外がうるさい。
ここがこんなに騒がしい場所だと何故今まで気がつかなかった?
それとも、僕の耳がおかしいのか。
そういえば、兄と会話ができるようになってきた。
やはり一時的なものだったのだろう。

<1ヶ月前の日付>
家の中が五月蝿いので静寂と安寧を得るには音流るる雄しべと雌しべをを刈り取らなければ僕はお前が君に僕がいらないと言った。どうしても靴下が片方見つからない。

<半月前の日付>
僕が君を彼女が怒れる前に彼女と我々の間の邪魔なやつを殺そう。彼女が好きな彼らの在れらの其れらも誰にも言ってはいけない。

<二週間前の日付>
少しだいぶ僕と彼女が心地よくなってきた。

<先週の日付>
書き物机とカラスは何故似ているのか?

<昨日の日付>
一羽か二羽か四羽か七羽が逃げた。

 

 

【日記を読んだ探索者に確定SAN減少 1】★PLには秘匿

 

 

双子の部屋の探索が終了したら<聞き耳>
アリス達がさっき、お茶会をしていたリビングから、物音がする。
誰かが歩いているような音が聞こえるね。
その音はすぐに止む。


お茶会の会場をこっそり覗くアリス。
床でぐっすり寝ている帽子屋の双子を、しゃがみこんで見ているひとがいるよ。

 

 

「…………」

 

 

そのひとは、軽々と双子を担ぎ上げてしまう。まるでぬいぐるみみたい!

そして、アリス達のほうに、ぐるんっ!と、首だけを向けた。まるでふくろうみたい!


ふくろうみたいなひとは、片足で床をドン!と叩いた。
すると、おうちの中の床が、あっ!という間に消えちゃった!


立つべき地面がなくなったら、どうなると思う?


そう!

 


アリスは、暗い暗いウサギ穴へと、ひゅうん、うん、うん。

そのウサギ穴はまっすぐ続いて、まるでどこかトンネルみたい。
そのあといきなり下り坂、いきなりすぎてふみとどまろうと思うまもなく。
気づいたらかなり深いふきぬけみたいなところに落っこちていて。


穴がすごく深いのか、
落ちるのがすごくゆるやかなのか、
どうにもひまがありすぎて、
落ちるあいだにあたりは見られる、
次にはどうなるのって思いもできる。


まず下を見てみると、ゆく先はわかるけれども、暗すぎて何がなんだか。

 


 

 


体を打ちつけながら、ようやく底へ辿り着いたアリス。

★探索者それぞれに1d4のダメージ。

 


周囲は真っ暗で、何も見えない。


声の反響音からして、ここが洞窟のような空間であることがわかる。

 

 

<アイデア>

アリスは、足元に「動かすことのできない金属のようなもの」があることに気がつく。


灯で照らすと、足元のそれは「線路」だ。
後にも先にも長く続いている。



 

 

そして、空間を照らした瞬間、アリスは気がつく。


通路の片一方に、数え切れないほどの生き物がこちらを見ている。


長い耳に毛むくじゃらの体、まるでウサギの頭を取ってつけたような、兎人間だ!

 

 

「ヒギャーーーー!!!!兎の化け物!!!」


「あ、ワイもやったわ!」

 

 

【大量の兎人間(緑の神の子)を見たことによるSAN値チェック 0/1d2】★PLには秘匿

 

★露天商で兎を購入し連れていた場合、ここで兎が兎人間たちのほうに飛び出して駆けていき、見えなくなってしまう。兎人間は、仲間である兎には危害を加えない。


兎人間たちは、アリスに手を伸ばす!


[DEX*5]を振って、兎人間から逃げよう!
失敗をすると、ぶたれるよ。

 

★DEX*5に失敗すると、兎人間たちに襲われて1d4のダメージを受ける。逃亡は可能。

★兎が苦手とする「大きな音」を出すことができれば、兎人間達はひるんで行動ができなくなる。ここは地下鉄なので、音がよく響く。DEX*5の代わりに「拳銃技能」で発砲音を出すなど、大きな音を出す行動も有効である。

 

 

アリスは走る!どこまでも走る!


兎人間を振り返らずに走り続けると、人工的な灯りが見えてきた!


どうやら地下鉄の駅構内のようだ、ここから地上に上がることができるだろう。


 

線路を抜け出し、構内の階段を駆け上がる!

びゅうん、うん、うん。

アリスの背後で、地下鉄の列車が通り過ぎる音が響き、強い風が吹く。


アリスは、風に押されるように地上に飛び出るのであった。

 


■燃えるハートのジャック、再び

 

あなた達が逃げた先は、少し都心から離れた駅の外だったようだ。
ウサギ達は追ってきていない。

 

★ここは上野から少し離れた郊外である。夢と現実の境界が曖昧になっている上野ではないので、このシーンは「現実」の世界である。


ありえない出来事を目の前にし、夢うつつのような状態のあなた達…
の、目を覚まさせるような声が響く。

 

 

活動家と思わしき青年

「…ハッ!」
「誰だ!お前ら!」

 

 

そこには、上野駅で演説をしていた活動家の青年が居た。

 

 

【上野駅前で演説してたよね?】

「……!」
「覚えているのか!俺の演説を!」

 

【警察に捕まったんじゃ……?】
「俺は捕まっても屈しないさ!なんといっても、俺は燃えるハートのジャックだからな!」

 

【ジャック?日本人だよね?】
「ジャックというのは、俺が俺自身に課した決意の表れ……」

★本名は「田中太郎」である。

 

【兎の宇佐美を見せる】
「……何故ウサギが喋っている!?」
「いいや、俺には全て解っている…!」
「これも全て不景気のせいだ!ウサギも助けを求めて言葉を使う時代か!」

 

【ここどこ?】

「ここは戦場さ…俺と…お前の…」

★正しくは上野から少し外れた郊外である。

 

【ちゃんと答えて】

「ここは… ここはな…!」
「………(地名を思い出せないという顔)
「ここは、"特別な武器"がある場所だ!」
「知りたければ俺について来い!」

 

【探索者が自分たちの怪我についてRPする、治療をしようとする】
「なんだ、怪我をしているのか…!?」
「全員ボロボロじゃないか!お前たちもやられたのか……、政府に!」

 

【そうです】
「何と卑劣な!!」
「傷を見せてみろ!」

 

★ジャックは探索者たちに応急手当をしてくれる。確定でHP1d3回復。


「これで一安心だ!」
「クソッ…無能な政府め!こうしてはいられない!俺は先を急がせてもらう!」

「俺にはやらなきゃいけないことがあるからな!」


【やらなきゃいけないことって?】
「な、なんでもねえよ!お前たちには関係ないだろ!」


青年はタオルを翻しながらクルリと背を向けるが……、
チラ…チラ…、と、あなたたちの方をしきりに振り返っている。

【とりあえずついていく】
「…そ、そんなに俺に同行したいのなら仕方がないな!」
「俺は信じてたゼッ!お前たちが同志だってことをなッ!」
「俺と一緒に、この国を変えよう!」
探索者全員に順番に肩組みをする。がっし!

「愛してるぞ、友よ!」


ジャックはあなた達を引き連れて、進んでゆく。

 

 

 ★ここでジャックに同行せず探索を終了し自宅に帰るなどの選択をすると、探索者は数日後「緑の神の子」に変貌しロストとなる。お疲れ様でした。「今、この場から離れて上野に戻れば兎人間にまた襲われるかもしれない……」などの理由を提示して、ジャックと行動を共にしてもらえるようプレイヤーに協力を仰ごう。

 


■陸軍火薬庫

ジャック

「いいか、今から俺たちが行う事は正義のための行動だ。」
「何処に潜んでいるかわからない悪に、この事を知られてはならない。慎重についてこい!」

 


ジャックが向かう先は、街はずれの林の中。
しばらく進むと、重厚な造りの倉庫が立っている。
どうやら、軍隊の火薬庫のようだ。


目を凝らして見渡すと、深夜の見張りの軍人が数人居るのが見受けられる。

 

 

見張りの軍人

「…………」

「今夜も冷えるな……」

 

 

【ジャックに何をするつもりか尋ねる】
「俺たちには、強さを証明するための…特別な武器が必要なんだ!」
「奴らの武器庫に入って、正義の炎を取り返す!」

 

【それって泥棒じゃ……】
「盗むのではない!俺たちも武装をするだけだ!」
「何が悪か!?それを決めるのは、俺達の自由だ!」
「お前らもやられたんだろう!?負けっぱなしでいいのか!?」

 

<アイデア>

武器庫から、大きな音が鳴るもの……

たとえば「爆弾」を拝借できれば、あの兎人間たちに対抗できるかもしれない。

 

 

火薬庫に忍び込むには、<隠密技能>もしくは<DEX*5>に成功しなくてはならない。

他にも代用できそうな技能や行動があれば、PLのアイデアを積極的に採用しよう。

 

 

 

■火薬庫

 

倉庫の中に入ると、沢山の木箱が詰まれている。
中身を漁る際、音をたてないように気をつけよう。

 

<隠密技能>もしくは<DEX*5>
成功した人数×1個、箱から【九一式手榴弾】を見つけられる。

 

【九一式手榴弾】
1931年から第二次大戦直前まで使われていた手榴弾。
栓を抜き、炸裂する前に7-8秒の遅延秒時を組み込んでいる。
[投擲]もしくは[DEX*5]で使用できる。

ダメージ:5d6

 

 

ジャック

「これか…!これさえあれば俺はこの国を変えられ……、」
「…………………………」

ジャック

「ブエッッッッッッッッッックション!!!!!!!!!!!!!」

 

 

ゲェーッ!!ジャックがクソデカくしゃみを放った!

1933年昭和8年、帝都。寒さも深まってきた12月上旬のことである。

 

軍人たち
「倉庫から人の声がするぞ!」
「侵入者!侵入者ー!」

 

倉庫の外から軍人たちの声がする!

急いでこの場から脱出しなければ……!

 

そのとき、何を思ったのか!

ジャックが、軍人達に向かって走ってゆくではないか!

 

 

ジャック

「…みんな!先に行けッ!」
「ここは俺が食い止める!!!」
「未来は…」

ジャック

「未来は、お前たちの手で紡ぐんだッ!!」
「ウオオオオオオオオッッッ!!!!!」

 

 

軍人たち

「うおっ!!なんだこの熱気は……!?」

「ひるむな、奴を捕まえろーッ!!」

 

 

宇佐美

「今や!アイツの思いを尊重して逃げるんや!」

 

 

 

活動家…… かつてアカと呼ばれた者たちの一人……
青年の背中は……、真っ赤に燃えていた。


妙な熱気を受けながら、あなた達は此処から離れていくのだった。

 

 

 

 

 

 


あなた達が軍人たちから逃れ切ったころ…
すっかり夜は更けている。



人々が寝静まったであろう時間、物音ひとつない。
明かりのない夜道を、遠くに見える上野の駅の明かりを目指して歩く。


街の色は赤に


黄いろ


みどりに きらきら
ぜんぶ
     きんきら
  ごごのこと
ゆるーり す いすい
 ぼ くらは  すす む
    にほんの オォルで
           ぎこちなく
         ほそい かい なで 
          こ 
  いでゆ  くく
し ししししし      ろい おてて   が かっ 
   こう だけ
           は   あ
 うねう ね 
   つづ く
        さ きを
          し  め す

 

 


いそいで、いそいで!
さいばんがはじまっちゃうよ!


あ!
そうだった!いそがなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

このタイミングで休憩時間を設けよう!

休憩明けから、なんの脈絡もなく怒涛の「狂気の世界」が始まる。

探索者のみならず、プレイヤーまでも大いに混乱・困惑させよう。

 


■不思議の国の……

 

★このシーンはKPの好きなように演出してもらいたい。以下のシーンを改変しても良いし、自分で考えた新しい演出を挿入しても良い。あなただけのワンダーランドを作ろう!

 

露天商①

「ターーーーーーーイムショーーーーッッック!!!!!!」 

 

 露天商①
「レディースアンジェントルメン!」
「宴もたけなわではございます!」
「ここで本日のアトラクション、クイズショーを始めさせて頂きます」
「まずはステージにご注目ください!」
「回答者の(探索者の名前)さん、(探索者の名前)さん、(探索者の名前)さんでございます!」
「ほらなにをぼんやりなさっているんです!」
「あがってあがって!RPして!

【クイズショーですよ!】
「さてさてルールをご説明致しましょう!」
「これから数分の時間をみなさんに差し上げます!」
「その数分の間に『3つのクイズ』に答えてくださいねえ!」
「難易度は最高ランク!教養のあるみなさんでも、難しいかもしれません!」
「全問正解で豪華賞品贈呈!!」
「ひとつでも間違えれば、キッツ~イおしおきが待ち構えております!」
「準備はよろしいですか?」
「それでは参りましょう!」
「音楽ッ!!スタートッッッ!!!!」  

 

 

【第1問】
「第1問ッ!」
「 1+1 は!? 」
→「2」と答える
「正解ッ!!素晴らしいッ!!」
「君はエジソンか!?アインシュタインか!?」

 

 

【第2問】
「それでは早速第2問!」
「みなさんおなじみ『宇佐美さん』をこのステージ内から探し出してください!」
「いちど引いてみて全体を見渡すのが良いかもしれませんよ!」

 

★マップ上のどこかに、宇佐美の立ち絵やコマなどを表示させよう。

画面を最大まで引かないと見えない……なんてところに設置するといいかもしれない。

 

→宇佐美がどこにいるか指摘する
「すんばらしいッ!!宵闇の梟よりも鋭い視力をお持ちのようで!!」


宇佐美

「なんやここ!?はよ戻してけれ!」

 

 

【第3問】

「いよいよ最後の問題です!第3問ッ!!」
「ウサギが苦手なものは次のうち、どーれだ!」
「 ①ニンジン ②大きな音 ③バナナ 」

 

→②と答える
「大大大大正解で御座います!もしやウサギ博士!?ウサギトレーナー!?」
「おめでとうございます!見事難問を全問正解致しました!」

 

 

露天商①
「回答者のみなさまには豪華賞品を贈呈!!」
「なんと!!あの!!伝説の生き物!!」  
「ジャバウォーーーーーッッッッック!!!!!!!!!!」
「気性が荒いので食べられないように注意してくださいね!」
「それではまた来週!アデュー!」

 

 
たいへんだ!おおきなジャバウォックがおいかけてくるよ!
はやくにげないとたべられちゃうよ!
伝説の怪物だから、無敵にきまっているよね!
もちろんバターナイフも爆弾も効かないよ!
ジャバウォックとおなじくらい大きくならないと、倒すなんて到底無理だね!

<DEX*5>成功で逃げることができるぞ!
失敗すると鉤爪でおにくがえぐられちゃう!

いけー!ジャバウォックー!

★DEXロールに失敗した探索者に2d6のダメージ。このダメージによる気絶は発生しない。また、このダメージによって致命傷(HP0以下)を負ってしまい、頭がカチ割れていても内臓が飛び出していても、なんとそのまま動くことができる。なぜならここは夢の世界だからだ!


やっぱりジャバウォックってつよい、そうおもいました。


いたいよ! いたいよ!
それでもにげなきゃね。 はしれはしれ!

 


まって、みて! あそこのやねのうえ!
うえきやのおじさんが えんとつからとびだしてく!

 

 

植木屋

「仕事なんてやめだやめだ!俺は逃げるぜ!!」

「ウヒョォーーーーッ きもちいい~~~っ」

 


どかーん!

とおくへとんじゃった! たのしそうだね!

 


アリス!アリス!
はしってるうちに、せまーい路地においこまれちゃった たいへんだ!

みてみて!この路地、はじっこに机が置いてある!
机の上には、"シベリアとコーヒー"があるよ!
りっすん!みんな、耳をすませてしてみよう!

 

<聞き耳>
がさごそ、がさごそ。 あしもとから音がする。
あ!ちっちゃいネズミがいるよ!



露天商②

「おっ!!!」

 

露天商②
「うははは!うはははは!!!」
「辛気臭い顔して、大変そうだな!」
そこの飯でも食って、俺みたいに気楽に生きろよ!」
「命乞いばかりの人生、楽しいか!?」
「どちらかを食べると大きくなる!そしてもう片方を食べると…」


 「
  俺
   み
    た
     い
    に
     な
      っ
      ち
    ま
   う
    か
     も
    な
   ぁ
    !
 う
  は
  は
    は
   は
     !
      !
       」


「わーい!」

 


ネズミはくるくるまわって にげちゃった!
チーズをもって にげちゃった!

 

 

【シベリアを食べる】
シベリアひとくち!ぐんぐんぐると!
たちまちおおきくなっちゃった! 屋根よりたかーいアリス!
ジャバウォックとおんなじおおきさになっちゃった!


【コーヒーを飲む】
コーヒーごくり!しゅんしゅんしゅるる!
ねずみとおなじのちいさいありす!

ジャバウォックののどにもやさしいおおきさですね。

★シベリアを食べると元の大きさに戻る。

 

 


" ジャバウォッキーを退治とな? "

 

 

 

そはゆうとろどき ぬらやかなるトーヴたち!
まんまにて ぐるてんしつつ ぎりねんす!

それなら、ジャバウォックすもうでしょうぶ!
ジャバウォックのきんにくは30。

 

 

★探索者とジャバウォックのSTR対抗。ジャバウォックのSTRは30。STR対抗に参加する探索者は、全員のSTRを合算させてよい。ただし、シベリアを食べて大きくなっていないと参加できないことに注意。



どっかーーーーーん!!!
 
げにも よわれなる ボロームのむれ!
うなくさめくは えをなれたるラースか!
 
ああジャバウォック!なげとばされて だいばくはつ!
ああジャバウォック!こっぱみじんの ばらばらだあ!
 

えーん!ジャバウォックがしんじゃった!

泣かないで!
みて!ジャバウォックのベロが!


あれ!? 絨毯みたいにのびちゃった!
どこにつづいてるのかな?


どこにむかってるのかな?


うえのこーえんをまっすぐ!
ピラミッドのやねまでまっすぐ!


博物館動物園駅!
博物館動物園駅!

 

 

 


■裁判

 

アリスのからだはどんどんちぢんで、もとのおおきさにもどっちゃった。

とんとん、とんとん。
くだる、くだる。 ピラミッドのかいだんをどんどんくだる。

ぱたぱた、ぱたぱた。
くだる、くだる。 どんどんくだる。

かいだんがおわると、まっくらな空間にたどりつく。
アリスの前には、てすりのようなものがあるね。
だれかが、ぎゅっとにぎるかもしれない。

まえをさえぎるものに手がふれると、あかりがつく。

 

 

あっ!裁判所だ!
いそいでいそいで!傍聴席に座ろう!
裁判だ! 裁判だ!

 

兎人間

「あいつらだ!」「あいつらがやったんだ!」

???

「静粛に、静粛に」

 

みて、裁判官のうしろにおおきな木があるよ。
アリスがたべたお野菜とそっくりだね。
あれはなんだろう?
とってもおいしそうだね。


???

「記録。(卓を開催している現在の時間 (例)22:23)。」  
「罪状」
「被告人『(探索者の名前)』『(探索者の名前)』『(探索者の名前)』『(探索者の名前)』
「お前達は女王様のタルトを無許可で食べた」


兎人間

「死刑だ!」「死刑にしろ!」

ころせころせー!
くびをきれー!


???

「静粛に!静粛に!」
「あくまでしらばっくれるというのならば、尋問を行う」

 

 

★ここでの「尋問」は探索者のみならず、プレイヤーにも向けられる!

各探索者のプレイヤーが、卓外で行っていた行動や言動を理不尽に尋問しよう。

以下、尋問の例。

 


■尋問の例

 

【卓の音声録音をしているプレイヤーの探索者に尋問】
???

「お前は1秒も逃さず録音をしているな?」
「我々を出し抜く隙を伺っている、動かぬ証拠である」
な…なんてことを!はずかしいわ!
へんたい!盗聴よ!

 

【ペットを飼育しているプレイヤーの探索者に尋問】
???

「傍に(ペットの名前)が居るだろう。スパイではないのか?」
(ペットの名前)がいれば、タルトを盗むのも容易いはずだ」
そのかわいさで騙すつもりね!
おそろしい!スパイ罪だ!

 

【シナリオ内容を考察しているプレイヤーの探索者に尋問】

???

「おまえは幾度も深く考察と推理を重ねていたな」
「その狡賢さがあればタルトを盗むのも容易いのではないか?」
そうだそうだ!博識な奴め!
そうだそうだ!俺たちの知らない知識持ちやがって!


【シナリオ内容にツッコミを入れていたプレイヤーの探索者に尋問】
???

「ことあるごとに強い口調で主張をしていたな」
「タルトを盗むために、みなの気を引いていたのではないか?」
キレのあるツッコミしやがって!
するどいツッコミしやがって!

【夜更かしをしていたプレイヤーの探索者に尋問】
???

「午前2時に寝ると言っていたのに、なぜ午前4時まで起きていたのか?」
「タルトを食べていたのではないかね?」
こらー!はやくねなさーい!
なんで午前四時に起きているんですか?
はやおきしてぬすんだのか!?なんて器用なやつなんだ!
恐ろしい…

 

【卓中におやつや飲み物をとっていたプレイヤーの探索者に尋問】

???

「おまえが先日食べていた(おやつの名前)」
「あれは本当に(おやつの名前)だったのか?」
「女王様のタルトではなかったのか?」
そうだそうだ!嘘じゃないのか!?
わるいやつめー!

 



兎人間

「殺せ!」殺せ!」「殺せ!」

 

???

「静粛に!静粛に!ストンピングは一匹3回まで!」

「あくまでしらをきるつもりか、よろしい」
「証人、入廷」

 

帽子屋の双子

「やつらがやったんだ!」「アリスがやったんだ!」
「僕らの彼らの嫌うあれらとそれらが泳げないと言った!」


???

「動かぬ証拠である」


兎人間

「決まりだ!」「殺せ!」「はやく殺せ!」

「さっさとやっちまえ!」
「ころしてしまえー!」


???

「静粛に!静粛に!」
「アリス、おまえに判決を下す」
「被告人アリスは、女王様に償いを捧げたのち、首を斬られる」

兎人間

「やったー!」「やったー!」「やったー!」
「わーいわーい!」


あっ!みて!裁判官のうしろに断頭台があるよ!
すごい!これならいっぱつだ!


兎人間

「死刑だ!」「死刑だ!」「死刑だ!」

 

宇佐美

「ひ…ヒェ…」


うさぎたちもたちあがって、アリスをつかまえようとしている!
女王様も大喜びだ!
たのしみだ、たのしみだな!
みんな大喜びだ!

???

「被告人アリス」
「最期に何か言葉は?」

 

 

【探索者が抗議のRPをする】
死刑囚はなにをワァワァ叫んでいるんだろう?
ウサギたちはうるさいのが嫌いだから、苛立っているみたいだね。
だめだよ、もう決まったことなんだから。

 

【探索者がその場から逃げようとする】

うさぎに囲まれているのに、どこにいこうとしているの?
むだだよ、アリス。もうだめだよ。

 


みて!うさぎの手が死刑囚に届きそうだよ!
はやく!はやくやっちゃって!


兎人間

「死刑だ!」「首を斬れ!」「死刑だ!」「首を斬れ!」

 

あきらめなよ、アリス!
ぜんぶいみなんてなかったんだよ。
さいしょからおわりだったんだよ。


兎人間

「死刑だ!」「死刑だ!」「死刑だ!」「死刑だ!」「死刑だ!」



★この状況を打破するには、陸軍火薬庫で手に入れた【九一式手榴弾】をぶん投げて爆発させ、凄まじい爆発音を出すしかない!爆発オチなんてサイテー!

★手榴弾以外の案を提案された場合、KPは「諦めなよ」「意味ないよ」「無駄だよ」などと冷たく返そう。ひどい!

 

 

【PLが「手榴弾を投げる」と宣言する】
投げちゃうの?
投げちゃうの?
いいの?
いいの?
ほんとうに?
ほんとうに?

【投げる!】
手榴弾のピンを引き抜き、兎人間の群れに向かって投げる。

数秒の後、凄まじい爆発音が裁判所に響き渡る!
次にあなた達が目を開けると、周囲にいた大量の兎人間たちが、ひっくりかえって気絶している。
唯一、断頭台と、不気味な大きな木の前に、あの裁判官が立っていた。

 

 

???

「なんということだ、神聖な裁判が台無しだ!!」
「女王様!」
「女王様が燃やされてしまう!」
「女王様が切られてしまう!」

???

「女王様!女王様!!」
「あなたさまは『現実』へと開花するべきなのです!」
「わたくしめは見事アリスを断首し、」
「あなたさまを、泡沫の夢から解き放ちましょう!」 

 

 

★ここで「狂気の世界」は終わりだ。KPは通常通りの描写や処理を行おう。



兎は大きな大きなハサミをじゃきじゃきと動かしながら、アリス、いや探索者に迫る。
あなた達は自らの意思で、この狂気の泡沫の夢から覚めようとしている。
あれも夢、これも夢。


探索者のHP全回復!
ただし、現実へと戻りつつある探索者は、狂気の世界で反映されることのなかった、減るはずだった正気度を今ここで一気に減らさなくてはならない!「???」のカウントのぶん、探索者のSANを一気に減らそう!

 

★ここでほとんどの探索者が発狂をするか否かのアイデアロールを行うだろう。「狂気」を「異常」だと認識できるようになったのだ!ここでは探索者の行動をなるべく制限しないようにして、プレイヤーのやりたいことをしてもらい、発狂RPを大いに楽しんでもらおう!

 

 

 

(緑の神の子)のステータス
STR14 CON20 POW18 DEX20 SIZ18 DB+1d4

▶︎HP19

▶︎ハサミ(小鎌)44% ダメージ:1d6+1+DB 武器耐久力:12

 

緑の神のステータス
STR30 CON130 POW35 DEX1 SIZ70 DB+5d6

▶︎HP→探索者全員の「???(減少SAN)」カウントの合計値

▶︎緑の神は攻撃を行わない

 

 

 

■女王の首を撥ねろ!

 

・この戦闘で攻撃できる対象は「兎」と「緑の神」である。「緑の神」の耐久値を0にできれば、戦闘は終了となる。

・「兎」を倒す必要はないが、「兎」は探索者の妨害を行う。

・「緑の神」は通常、魔力の付与されていない武器での攻撃は無効になってしまう。が、ここでの緑の神はまだ完全に顕現していない状態だ。通常の武器でも攻撃が通る。

 


【兎を刃物系武器で攻撃する】
裁判官の体に穴が空き、切り裂かれる。
切り裂いた腹から血が吹き出すかと思われたが、その腹からばらばらばらと飛び出してくるのは「おがくず」だった。
兎はまったくひるまない。

???

「遅刻だ遅刻だ!!」
「女王様がお怒りだ!」

「処刑だ!斬首だ!!女王様もお喜びになる!」

「おまえの席はないよ!おまえの席はないよ!」

 

 

★「緑の神」のHPを0にしたら、以下の描写。

 


あの大きな木が、この空間を支えていたのだろうか。
裁判所が、ぐらぐら、ぐらぐらと揺れる。
いつかの大震災のように、すべてが崩れゆく。

くずれる、くずれる。
きえる、きえる。
なくなる、なくなる。

???

「じょおうさま!」
「ああ、あなたさまは、」
「げんじつ に 」
「ほんと う の かくせ い の  せかい  に 」
「 さく べ   き     」

 

 

あなた達の意識は、天井へ引き上げられるように遠くなってゆく。

 

 


■ふしぎなゆめのこと

 

どれほどの時間が経ったのだろう。
遠くから、なんだか懐かしい音が聞こえてくるような気がする。
鳥の声、木の音、風の音…


そして…

 



宇佐美のワイフ

「I’m glad you made it!」

「Forgot my kiss, My darling!」

宇佐美

「……」
「は!ワイフ!」

 

 

宇佐美のワイフ

「Chu♡」

 

宇佐美

「ワイフ~!会いたかったで~!」

 

 

目を覚ますと、そこには愛するワイフと抱き合う人間の宇佐美が居た。


あなた達は地面に倒れている。
そこは、開業前の博物館動物園駅の入り口前だった。


……長い夢を見ていたような気分だ。

 


宇佐美
「どや!ワイのワイフ美人やろ!」
「もうワイフのためなら、兎になろうがなんとやr…」
「…ワイ、人に戻っとる!?」

島田

「みんなー」
「なんでこんなところで寝てるんですか。探したんですよ。」

「宇佐美さん、次の記事のネタ探しに行くって言って…」
「そのまま何も持ってこないじゃないですか。こまりますよう。」

 

 

宇佐美
「え!?だからハサミ男について調べとるって…」

 

島田
「ハサミ男?」
「なんですかそれ?」

 

宇佐美のワイフ
「Scissorman? I do not know.」

 

宇佐美
「………え?」

 


★ハサミ男事件や兎人間の襲来……、今まで起きたことは全て「夢」だったのだろうか?

 夢のような出来事は、探索者と、探索者のそばにいた宇佐美しか覚えていないようだ。

★探索者のRPを終えたら、エンディングへ。

 

 


■エンディング

 

不思議な気持ちを抱えたまま、上野公園の並木道を歩く。

 

 

植木屋

「~♪」

 

 

そこには、大きなハサミで樹木を整えている植木屋の姿があったり。

 

 

露天商②

「う~ん…俺のチーズ…」
「俺のチーズどこいったんだよぉ~…」

露天商①

「もぉ〜、また酔っぱらってる!」
「ほら、帰るよ!」

 

 

酔いつぶれた露天商たちが路上で寝ていたり。

 

 

帽子屋の双子

「来週の父さんと母さんの結婚記念日、何を贈ろうか?」
「山猫軒で食事をしながら考えようよ、兄さん」
「兄のお気に入りの店を覚えているとは、優秀な弟だな!」
「ははは……」

 

 

今日も上野駅ではたくさんの人々が行きかう。
それは昭和八年でも、令和の時代でも変わらない事。
変わらない日常、変わらない現実。

 


…さて、この現実は、本当に現実なのでしょうか?


夢でない保証とは?
現実である証明とは?
夢と現実って、何が違うんでしょうね。

ま、そんなことはどうでもいいでしょう。

 

 


たくさんの車が行き交う駅前の道路でタクシーが停まり、乗客を乗せた。

 


「お客さん、どちらまで行かれますか?」

 

 

 

???

「…………」


 ■報酬

 

・探索者が生還した:SAN1d10回復

・宇佐美が生存している:SAN1d3回復

・神話技能+2%(緑の神、緑の神の子)

 


■あとがき

犬飼ビーノ

 

『ナンセンス』なシナリオ、如何でしたでしょうか。シナリオ製作者である我々は、このシナリオを雰囲気でキーパリングしていたので、今回こうして文章に書き起こすのは一苦労でした。これこそが「雰囲気シナリオ」……なのか!?「泡沫の兎」は身内向けに製作したシナリオであり、公開予定はありませんでした。が、せっかく作ったのだし……ということで、1年越しに公開。たいへん回しにくいシナリオですが、やりやすいように改変を行い、KPさんの考える「ナンセンス」を存分に表現して頂ければ幸いです!海外の童話(今回は不思議の国のアリス)と昭和初期日本、意外と合うな〜。製作にあたり、資料集めや調査を行い、たくさんのNPCを描いて下さったアキヤマ氏には頭が上がりません!サンキュー!!また共同製作したいですね。

 

アキヤマ

 

『狂気』が説明されてしまったら、それはもう『正気』なのではないか?
狂気を心底味わうためには、探索者だけではなくここに居る全員が狂気に巻き込まれる必要がある!

…という事を前々から思っていて、そういう事がやりたくてこのシナリオが出来上がりました。
『ナンセンス』や『シュルレアリスム』がテーマの泡沫の兎ですが、様々な作品へのリスペクト、オマージュがあります。気づいたらクスリと笑ってやってください。

回し手さんそれぞれの解釈で、探索者とプレイヤーたちに狂気を見せてやってください。
配布用に改めてシナリオを纏めて下さった犬飼氏にサンキューです!
みんな、いい悪夢、見よう!

 


 

【関連作品・参考文献】敬称略

 

Wikipedia『ウサギバブル』

ルイス・キャロル 『Alice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)

ヤン・シュヴァンクマイエル『Něco z Alenky(アリス)

ルイス・ブニュエル&サルバドール・ダリ『Un Chien Andalou(アンダルシアの犬)

谷山浩子 x ROLLY 『ハサミトギを追いかけて』『意味なしアリス』(『泡沫の兎』イメージソング)

 


NPCイラストデータ

▶︎トレーラー画像2枚、NPC差分53枚、MAP画像1枚が無料でダウンロードできるぞ!

BOOTHをすると、なんと作者にシベリアとコーヒーを奢ることができる。

 

 ※ダウンロードできるイラストは『泡沫の兎』をプレイする目的以外での使用を禁止しています。


 ※当シナリオの内容はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実際のものとは関係ありません。また、特定の思想・差別を支持するものではありません。

 

2021/03/06 シナリオ公開